医療保険について

先進医療

2020年度に実施された先進医療の実績が報告されました。

2020年度は、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、医療機関を受診する患者数が例年より減少したことや、予定されていた治療が延期されるケースがあるなど、診療自体に大きな影響がある年となりました。また、先進医療として実施件数の多かった「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術(白内障手術)」が、先進医療から除外されたこともあり、2020年度の実績報告は大きな動きがありました。

先進医療費と患者数の推移

2020年度(2019年7月1日~2020年6月30日)は、先進医療費用の総額が約62億円、全患者数が5,459人でした。過去最高であった2019年度に比べ、患者数は約86%減少し、先進医療費用の総額に至っては、約80%減少しました。

この大きな変化は、先進医療実施件数が最も多かった「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術(白内障手術)」の除外が大きく影響しています。

2020年度の先進医療実施件数ランキング

①陽子線治療

②MRI撮影及び超音波検査融合画像に基づく前立腺針生検法

③重粒子線治療

④ウイルスに起因する難治性の眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法)

となっています。

「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術(白内障手術)」が先進医療から除外された今、陽子線や重粒子線を用いた粒子線治療がランキング上位となっています。2019年度と比べて2020年度の実施件数はやや減少しているものの、高額な治療であるため、先進医療全体の費用総額の主な技術となっています。 

2020年度、粒子線治療の実施状況

2020年度の先進医療Aとして粒子線治療を実施した患者は、陽子線治療965例、重粒子線治療719例、計1684例でした。その中でも、肝胆膵腫瘍が46.3%と約半数を占めています。続いて、肺・縦隔腫瘍、転移性腫瘍となっています。

そして、2020年度の先進医療Aとして実施された粒子線治療治療実績で注目したいのが、「キャンサーボード」の実施率が100%であったことです。「キャンサーボード」とは、手術、放射線診断、放射線治療、化学療法、病理診断及び緩和ケアに携わる専門的な知識及び技術を有する医師その他の専門を異にする医師等によるがん患者の症状、状態及び治療方針等を意見交換・共有・検討・確認等するためのカンファレンスをいいます。

 

まとめ

医療の進歩により、治療が選択できる時代となりました。その中で、患者とその家族の日常生活が置いてきぼりにならないように、患者の医学的問題のみでなく、社会的側面も同時に考えていくべき問題です。患者とその家族にとって最善の医療を検討し、主治医や治療に関わる専門医師陣、療養生活や服薬管理、心理的・社会的支援の専門家たちがチームで医療を提供することが求められています。先進医療と聞くと、なんとなく医学的問題のみにとらわれてしまいがちです。しかし、先進医療Aとして実施された粒子線治療におけるキャンサーボードが全症例で実施されているとの報告は、医療の中心には患者とその家族がいることを改めて認識するものでした。

2020年度は、新たに先進医療Aに1種類、先進医療Bに10種類、計11種類の技術が承認されました。また、先進医療Aで4種類、先進医療Bで1種類が保険収載となり、そ一方で、取り下げられた技術は計7種類、削除技術は計4種類となっています。

多田 明美
妻として、3人の子供の母親としての経験を活かしながら、皆様にとっての人生での大切な場面を一緒に考えていけたらと思います。 誰かに言われるままではなく、しっかりと考えるお手伝いをさせていただきます。
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